子どもがくれた大切なもの

早乙女智子さん

<<「HAPPYなお産へのこだわり」の続きです)

―早乙女先生は、プライベートでは二人のお子さんのお母様でもあるわけですが、子育てを通じて自分が変わったこと、影響を受けたことはありますか?

私はいつも妊婦さんに「赤ちゃんはお父さんお母さんを成長させるために選んで来るんだよ」と言うのですが、自分自身もやはりそうだなあと思うところがあります。
子どもは20歳と16歳になりました。当直や呼び出しもある不規則な仕事なので、母に全面的に協力してもらってここまできたので、私が育てましたと胸を張れるわけではないのですが、子どものおかげでずいぶん変わりました。
時代背景もあると思いますが、私は「きちんと○○しないといけない」と育てられてきた気がします。そんな私が、いつの頃からか、3,4歳が人間として一番素直で正しい時期なのかなと思うようになり、困ったときには3歳児の視点に戻るようにしています。イヤだったらイヤッて言えますよね、3歳児は。でもこれはやらなくちゃと言われたら、じゃあやらないとなというのもわかるし。
そんな3歳児の視点で、「本当にやるべきこと、やりたいこと、やっていいこと」を自分の中で振りわけられるようになったのは、子どもを通してだと思います。
ただ、そんな私をみて、子どもたちは大人になってしまいました。ママが一番うちで子どもだよねーって(笑)
子どもたちは、両親祖父母の中で育ったので、色々な意見があるということを理解し、でも自分の意見はこうだと言える。もちろん彼らなりに葛藤はしていますけれど。

さびしい思いをさせたし、ずっと子どもと一緒にいられる人がうらやましいと思わなくもないのですが、でも時間じゃないかなとも思う。私の場合、ずっと家にいても多分イライラしながら子育てをして、キレてしまっていたかもしれない。だから精神的な距離が問題なければいいと思います。
「きちんとする」「がんばる」でずっとやってきた反動で、子どもにはゆるーくゆるーくやっているのでのんびりしていますが、それはそれでゆっくり育つのもいいかなと思っています。子ども自身がこれをやりたい、こうなりたいと思うまで見守るのが結局近道なのではないかと。

私はもともとカップラーメンの3分が待てなくて、2分半で開けて硬くても食べちゃう人間だったんですよ。
でも、子どもって1年経たないと1歳にならないし、3年経たなければ3歳にならない。そうやって時間軸が自分のものから子どもの時間軸に変わっていく・・待つことが楽しみになる、というのは親になって味わえる新たな感覚ですよね。

―では、最後にこれから子どもを産み育てていく世代に、ポジティブメッセージをお願いします。


20世紀は歯車世代、そして21世紀は「個」の時代です。だから、そのなかでどれだけバリエーションを楽しめるかがポイントなのです。
かつては核家族化が進んでも、本当に「個」にはなりきれない葛藤がありました。やっと「個」の時代にはなったのだけど、今度は「孤」の時代に向かいそうな状態なので、そうならないよう地域でもいいし、友達でもいいし、ゆるーい知り合いでもなんでもいいのだけど、自分の持ち味をだしながら、人とつながっていくということが大事なのだと思います。
離婚や再婚、不妊治療などが増え家族関係が複雑化している今は、「家族とはこういうもの」と単純に決めつけられません。○○家の何番目の子ということではなく、生を受けた自分というものをどうとらえ、誰と人間関係を育んでいくのかが子どもにとって大切だし、またそうした柔軟な子育ての中で、一緒に育っていく仲間としてお母さん達がゆるやかに連携していければいい。
現実に産科病棟では18、28、38歳の母が一緒です。これからは48歳の母も加わるかもしれない。そんな状況で「みんな同じに仲良く」といっても無理があるのですよ。だから、「私はこれでいいんだ」と思えることが大事なんですね。手のこんだキャラ弁をがんばるおかあさんもいれば、うちはおにぎりでと思う人がいてもいい。
自分のバリエーションを楽しみつつ、相手のバリエーションも許容する。ネット時代になって生身での距離の取り方がみんな下手になったと思う面もありますが、何かあったときは「遠くの親戚より近所の知り合い」なのですから、「違うけど、つながる」というのを大切にしてほしいですね。
そして、何より「お産は楽しい!」です。その前段階であるセックスも含め、自分の体や心と向き合い、自分らしいお産を一人ひとりが考えていってくれればいいなと思います。

ありがとうございました。

———————–プロフィール ——————————————————————-
早乙女智子(さおとめ ともこ)
日本産婦人科学会認定 産婦人科専門医
1961年生まれ
1986年筑波大学医学専門学群卒業。
国立国際医療センター、東京都職員共済組合青山病院、ふれあい横浜ホスピタル勤務などを経て、2006年より神奈川県立汐見台病院産婦人科勤務。
「性と健康を考える女性専門家の会」副会長、日本性科学会認定セックスセラピスト。
自身は5度の妊娠のうち流産や子宮外妊娠を経て2人の子を出産。
著書は、『LOVE・ラブ・えっち』(保健同人社)、『13歳からの「恋とからだ」ノート』(新講社)など多数。『現代用語の基礎知識』(自由国民社) 「性」の項目も担当。
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