プレーパークは「子どもの居酒屋」!

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<<「誰が来てもいい、ドラマがある遊び場で子どもは育つ」の続きです)
―それでは、ここ「川崎市子ども夢パーク」はどんな遊び場でしょうか?
川合:とにかく広い!子どもたちが、思いっきり遊びこめるスペースがあります。また、名前に「プレーパーク」とついていないので、プレーパークと思わずに遊んでいる人もいて面白いです。児童公園だと思って来てみたら、火も工具も使えてびっくりする親子がいたり、バスケをしにきた高校生が、パーク内のターザンロープで遊んだり。異世代の子どもたちが知りあい、名前を呼び合うようになったりしています。

嶋村:乳幼児の親子にも室内から外の遊び場にもでてきてもらおうと、歩きやすいよう木道を置いたりなどの工夫もしています。子どもだけが遊ぶのではなく、色々な大人も遊んでもらいたいと思うのです。海外のプレーパークは、国にもよりますが、安全重視のところが多く、ここの写真を見せるとうらやましがられます。「この自由な雰囲気を大事にしてほしい」と。サービスを提供する側とされる側に分かれるようになると、管理責任への不安から、きゅうくつになることばかりになってしまうので、「来る人みんなで遊び場をつくっていけるようにする」という基本の精神は忘れたくないですね。

―プレーパークやプレーリーダーは、子どもにとってどんな存在だと思いますか?

川合:私たちは「先生でもない、親でもない大人」として子どもと出会っています。そして、「地域で子どもを育てる」という意味で、子育てしています。自分より小さい子、大きい子、やんちゃな子、昔やんちゃだったお父さん、説教するおばちゃん、沢山の人が集まってみんなで子どもを育てている、そういう場所なのだと思います。

嶋村:今は、中学生がたばこを吸っているのを見ても、みんな素通りする。でも顔を知っていたら、まして小さな子ども時代を知っていたら、声がかけられるでしょう。そういう「知ってるぞ~」という人間関係を地域に増やしたい。「子育ちの場所」が地域にあったら、親の子育てはもっと楽になりますよね。プレーパークはいわば「子どもの居酒屋」ですよ(笑)。お父さんにとっての会社と家の間にある居酒屋みたいなもので、ちょっと一息つける場所。家や学校で見せる顔とは違った表情を見せられる場があれば、安心感から子どもは自由に表現し始めます。その意味では、「教育」と「しつけ」の場所とは一味違った役割を担える場にしたいと考えています。

川合:もちろん子どもだけでなく、来られているお母さんお父さんたちの気持ちも受けとめようと思っています。ですが、私たちのスタンスがなかなかうまく伝えられないときもありますね。そういうときは悩みます。

嶋村:親は子どもの環境の大きなひとつだから、心がすれ違ったまま関係が切れてしまうと悲しいよね。「子どものやりたい」をとりつつ、「親の心配」を汲みつつ、ですね。子どもにとっては、親や先生以外に「意味のある大人」が増える方がいいのです。あの人は声をかけてくれる人とか、ちょっと口うるさい変な人とか。昔のような地域社会が失われた今、こういう遊び場がその役割を担っていると思います。

―それでは最後にポジティブメッセージをお願いします。

川合:自分自身もそうですが、子どもとの距離が近すぎると、つい小言を言いたくなってしまうもの。だから外へでるのが一番。そこで声をかけてもらうと、親も子もいい気持ちになれるので、恐れずに外にでて色々な人や場所に出会って欲しいです。
 もうひとつ、同世代の友達と話すと、「子どもはこんな風に育てたい。だからこれくらいのお金がないと結婚もできない・・」という風に考えている。でも実際の子育てって、自分が頭で思っていたこととは全然違う。みんな、なんとかなっている!あまり夢を膨らませすぎると現実に直面したとき大変じゃないかと思うので、気楽に構えてほしいです。私も、親になれば色々大変だろうけど、そんなときは、周りの人がきっと助けてくれると思っています。そう思える関係をつくることが大事ですよね。

嶋村:私も、今、生後5カ月の子どもの親です。子どもが生まれる時にどういう風に育ってほしいか考えました。でも、あれこれ考えてもしょうがないなと思ってしまった(笑)。いろいろな壁にぶつからないと大きくなれないわけで、いいこと悪いこと、多くの出会いや経験をして、その子なりに考えて育っていってほしいと願うだけ。親だけで子育てはできないから、他の親にも「うちの子に関わってね」と言いたい。そうやって、みんなで子どもを育てていって「楽しい!」を感じてほしい。
子どもと関わる時には、「どうしたら、粋(いき)な関係を作れるのか」ということを日々考えています。これからも、いっぱい遊び心をもって、子どもたちと関わっていきたいです!

―ありがとうございました。

———————–プロフィール———————————————————
川合麻沙美(かわい あさみ)
川崎市子ども夢パークスタッフ
1985年生まれ
2007年 大妻女子大学家政学部児童学科児童学専攻卒業
同年~  現職

嶋村仁志(しまむら ひとし) 
TOKYO PLAY代表、IPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)東アジア副代表、NPO法人日本冒険遊び場づくり協会理事
1968年生まれ 
1995年英国リーズ・メトロポリタン大学社会健康学部プレイワーク学科高等教育課程修了 1996年 世田谷羽根木プレーパーク プレーリーダー 
2003年より川崎市子ども夢パーク、2009年より プレーパークむさしの を中心に活動。
2010年 たくさんの人が子どもの遊ぶ環境を豊かにするための関わりが持てるようにと、「TOKYO PLAY」を立ち上げ、様々なプロジェクトを展開している。
翻訳書「プレイワーク―子どもの遊びに関わる大人の自己評価―」(プレイ・ウェールズ&ボブ・ヒューズ著、学文社)
著書「もっと自由な遊び場を」(共著、大月書店)
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