誰が来てもいい、ドラマがある遊び場で子どもが育つ

川崎子ども夢パーク

プレーパークに行ったことはありますか?どんなところか知っていますか?
今回は、「川崎市子ども夢パーク」で、プレーリーダーのお二人、川合麻沙美さんと嶋村仁志さんにお話を伺ってきました。

―まず、プレーパークは普通の公園と何が違うのか、教えてください。

川合:プレーパークは、子どもが変えていける、子ども自身で遊びをつくる、禁止事項の看板のない遊び場です。土や材木や水など、自然の素材や道具はあるけど、遊び方は決まっていない。ルールはお互いの関係の中でできていきます。「ちょっとアチッ」、「ちょっとイタッ」という程度までは経験ですので見守っています。

嶋村:プレーパークでは、プレーリーダーが子どもの動きを見ていて、段階をおった体験ができます。もちろん本当に危険なことは体を張って止めますが、子ども達に「何をどうすると本当に危ないのか、どこまでなら許容範囲なのか」を実体験してほしいのです。プレーリーダーは、「あえて挑戦する危険」であるリスクと「目にみえない隠れた危険」のハザードを分けて考え、目配り気配りしています。

―プレーリーダーになろうと思ったきっかけを教えてください。

川合:私は小学校の頃から幼稚園か保育所の先生になりたくて、大学は児童学科に入りました。でも教育実習の時、先生として「子どもが〇〇していたら注意」「危ないからやってはいけない」など、子どもに『なぜ?』と聞かれ「何が危ないのか」「本当にやってはいけないことなのか」説明できない声かけルールが多いことに疑問を持ちました。そんなとき、ゼミの先生から教えられて、プレーパークと出会いました。子どもに自分が納得したこと、ちゃんと説明できることを言いたい、という思いがあったので、とても共感し、プレーパークで子どもや遊びについて学びたいと思い、卒業後、プレーリーダーの職に就きました。


嶋村:大学1年の時に友達に誘われて、世田谷の羽根木プレーパークに行ったのが最初です。そこには小学生や中学生もいて、お母さん、おじいちゃんも焚き火にあたっている。地域の全ての世代が共有している居場所に驚きました。また、同い年のプレーリーダーが遊び場の正義を代表しているような存在で、憧れを持つ一方、自分には無理と思っていました。大学は外国語学部で通訳志望でしたが、イギリスに子どもの遊びのことを勉強するところがあると知り、卒業後アルバイトしてお金をためて、2年半ほど留学。帰国後は遊びのことを広げる仕事がしたくて、羽根木プレーパークの事業担当に応募したところ、「まずは、現場を知れ」ということで、プレーリーダーになりました。

―プレーリーダーになって変わったところはありますか?

嶋村:それはもう!(笑)もともと会議の時など全員が意見を言い終わった後に当たり障りのないことをいうタイプで、当初2年半くらいは、何度もやめようと思いました。けれども、子どもたちとの出会いが意識を変えてくれたように思います。子どもは誰もが、いろいろ抱えて揺れている、その向こうにいる親もみんな揺れながら生きている、それが見えてきて、「この子たちが活き活きできること、楽になれることにつながる全て」が仕事だと気づきました。みんなが「生きている!」という実感をもてる、そういう体験ができる遊び場にするにはどうしたらいいかを真剣に考え始めました。

川合:私も最初なかなか動けない時期がありました。子どもに「失敗していいよ」と言っているくせに、自分は失敗を恐れていることに気づいて、ハッとしました。また、本には、「乳幼児は・・、小学生は・・」とラベリングされた知識がありますが、座学と実学のギャップもあります。この仕事は、自分自身が問われる職業なのですよね。いいプレーリーダー像を演じようとしても素の自分がさらされてしまうので、自分を磨いて、学んで成長していくしかないのです。

嶋村:人と関わる仕事全てに通じると思いますが、他人の人生への想像力が何より重要です。出会いを糧に、自分自身と向き合い成長することが、人の役に立つ仕事なのだと思います。

”プレーパークは「子どもの居酒屋」!”に続く>>

———————–プロフィール———————————————————
川合麻沙美(かわい あさみ)
川崎市子ども夢パークスタッフ
1985年生まれ
2007年 大妻女子大学家政学部児童学科児童学専攻卒業
同年~  現職

嶋村仁志(しまむら ひとし) 
TOKYO PLAY代表、IPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)東アジア副代表、NPO法人日本冒険遊び場づくり協会理事
1968年生まれ 
1995年英国リーズ・メトロポリタン大学社会健康学部プレイワーク学科高等教育課程修了 1996年 世田谷羽根木プレーパーク プレーリーダー 
2003年より川崎市子ども夢パーク、2009年より プレーパークむさしの を中心に活動。
2010年 たくさんの人が子どもの遊ぶ環境を豊かにするための関わりが持てるようにと、「TOKYO PLAY」を立ち上げ、様々なプロジェクトを展開している。
翻訳書「プレイワーク―子どもの遊びに関わる大人の自己評価―」(プレイ・ウェールズ&ボブ・ヒューズ著、学文社)
著書「もっと自由な遊び場を」(共著、大月書店)
——————————————————————————————–