絵本に「いのちの輝き」と「平和の願い」をこめて

絵本ライブラリ_

<<「自分らしい絵」を探しつづけての続きです)

「アジア絵本ライブラリー」はどんなところですか?
 
日本・中国・韓国・台湾の4カ国語の絵本を集めた小さなライブラリーです。絵本を通して、アジアの国の生活を知ってもらったり、また同じ本の4ヶ国語版を見ることで、言葉の違い、たとえば漢字の省略の仕方などを視覚で感じてもらい興味をもってもらったり。このアジア絵本ライブラリーの本格的オープンは、今年の秋頃の予定です。

でも、ここはただ本を見てもらうだけの場所ではないのです。
子どもたちと楽しい時間を過ごすためのワークショップやお話し会、紙芝居などの活動をしています。その他にも、野鳥の会と協働して、子どもからお年寄りまで楽しめるような企画を考えています。
ここでアートのワークショップをすると子どもたちと自然に仲良くなれる。お母さんたちも一緒になって、いろんなことを話しながら作業してくれたりする。そうやって、何かものを作りにここへ来てもらって、ふと気づくと「あまり本屋さんでは見かけない絵本があるなー、じゃあ読んでみようかな」って手にとってもらえたらいいなと思うのです。そういう場所なのです、ここは。
逗子の子どもフェスティバルでは、ピーインシー(皮影戯:中国影絵)の実演もやりました。

これは北京に行ったときに知り合った方につくってもらったもので、とても美しい動きをする中国の伝統芸能です。これを今度は懐かしい歌に合わせてお年寄りのところでやりたいと思っています。
また、せっかく4カ国語の本があるので、絵本が読める程度の気楽な語学の講座みたいなものも今後開いていきたいですね。朝鮮人学校や中国人学校のボランティアも募って。日本に来たアジアのお嫁さんがお子さんに母国語で絵本を読んであげられるお手伝いもしたい。そうやってやりたいことが自然に増えていますね。

20年ほど前から、中国や韓国を訪問したことをきっかけに、アジアの国々との交流もしています。韓国や中国の若手の絵本作家と交流し、日本に紹介するだけでなく、今、日中韓で戦争と平和に関わる本を共に作っています。とても重いテーマですが、それぞれの国の事情や思いを辛辣なまでにぶつけあって、やりとりしあっている過程に手ごたえを感じています。

―子どもたちと、地域と、世界とつながる「アジア絵本ライブラリー」なのですね。それでは最後にポジティブメッセージをお願いします。

私には「ひまわり」という作品があります。
太い線で描かれたこの作品を見ると、太陽に向かってのびやかに成長し、最後に種となって再生への道筋をたどるひまわりの生命力の強さを感じていただけるのではないでしょうか。
この「ひまわり」や「てんてんてん」などの作品を見て、和歌山静子は元気で健康な人間だと思われていると思うのですが、実は私は十数年来、心の病を患っています。この病気が怖いのは自分の心のコントロールが効かなくなって死に向かって走っていこうとするところ。幸いお医者様に恵まれ、自分でも、生命保険をやめるなどのいくつかのストッパーを設定して、ここまでやってこられました。
世の中にはいろいろな病気や悩みに苦しんでいる人が多いと思いますが、そういう方にも是非読んでもらって、元気になってもらえればと思います。心が弱っている方に、「頑張れ」はNGですが、さりげなく「元気になってね」というメッセージを伝えたい。

また、ここ、アジア絵本ライブラリーにある絵本を読んだ子どもたちが、大きくなって、外国で現地の人と、ある絵本について、お互いに「あ、それ子どものとき読んだ」という話になったりしたら素敵ですね。「幼いころに同じ絵本の世界を共有した」ということがわかれば、ぐっと心の距離が縮まり、友達といっても大げさじゃないと思うのです。そうなったら、「友達とは戦争をしたくない」と思うでしょう?
そうやって絵本という形をとおして、子どもたちやいろいろな国の人たちの心に届く活動をすること、それはすべて「平和」につながることだと思います。
それが長年絵本に関わってきた私の果たすべき使命なのかなと思っています。

―ありがとうございました。

———————–プロフィール———————————————————
和歌山静子(わかやましずこ)
1940年京都市生まれ。武蔵野美術大学デザイン科卒業。児童出版美術家連盟所属。
寺村輝夫氏の『ぼくは王様』をはじめとする「王様シリーズ」など、挿絵、絵本、デザインで活躍。
1980年 『あいうえ王さま』(理論社)で絵本にっぽん大賞受賞。1982年『おおきなちいさいぞう」(文研出版)で講談社出版文化賞絵本部門受賞。『しっこっこ(できるよできる)』(偕成社)『てんてんてん』『ひまわり』(福音館書店)など作品多数。
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