「大切にする心」を育む、おもちゃドクターとして

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壊れたおもちゃ、どうしていますか?
修理に出すと高くつくので、心残りだけどそのまま放置・・なんてことはありませんか?
今回は、横浜市南区を中心に、壊れたおもちゃの修理を行う「みなみ・おもちゃ病院」を運営されている、おもちゃドクターの三上峰代さんにお話を伺いました。

―三上さんが、みなみ・おもちゃ病院を立ち上げた経緯を教えてください。

私は定年退職後、高齢者の住環境に関するボランティアグループで庭木の剪定や家の修繕などの活動をしていましたが、当時、子育てが社会的課題になってきていて、なにか子どもの育成に関わりたいと思っていたところ、横浜市南区にはおもちゃドクターがいないという話を聞きました。おもちゃの修繕なら技術屋だった自分の腕を活かせるし、座ってできるので息長く活動できると思い立ち、2年ほど自分で勉強してから、仲間とともに「みなみ・おもちゃ病院」を開設しました。現在は、9人の仲間とともに市内10か所で活動しています。
同時に日本おもちゃ病院協会にも登録しました。この協会のホームページを見て、常時受け付けているということで、わざわざ遠く島根から依頼されたこともあります。遠方の場合でも、修理依頼を受けた場合は、直っても直らなくても着払いでお返しするという条件で受け付けています。

―おもちゃと一口に言っても様々な種類があると思うのですが、直ることが多いのでしょうか?
私たちが昨年(2010年)に診察した840件のうち、治癒率は88%でした。
おもちゃで一番壊れやすい箇所は電池部分、モーターとスピーカーです。
私たちは助成金を受けていますので、部品代は300円を超える場合のみ、あらかじめ了解を得てから頂戴します。モーターもスピーカーも安価なので、ほとんどが無償交換の範囲内で直ります。メーカーにおもちゃの修理を頼むと高くつきますが、その大きな部分を占めるのは輸送費なのですよ。
大事なおもちゃでも修理費が高すぎるとなかなか頼めなくて、結局捨ててしまうことになる。それを繰り返していると子どもに「ものを大事にする心」が育たたなくなる。本当は直ることが多いので、ぜひ近くのおもちゃ病院を利用して、おもちゃを大事にしてほしいですね。
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おもちゃ病院では、年配の方から古くて思い入れのあるおもちゃの修理依頼を受けることもあります。亡くなったご主人の大切にしていたブリキのおもちゃや、四~五十年前に自分が遊んでいたおもちゃなどです。そういうものは大事に修理させていただきます。
昔のブリキのおもちゃは直せることが多いのです。
逆に、今の安価なおもちゃは、使い捨てを前提に作られているために、修理不能な場合もよくあります。またゲーム機などのIC基板の不良の場合は、海外生産品で部品の調達が難しいため、やはり修理できないことが多いのです。
修理できるおもちゃを選ぶということを親御さんには気をつけていただきたいと願っています。
また、ぬいぐるみや人形など布を使っているものは、はがさないと修理できないので、気を使います。接着剤でとめる場合は元通りにしてお返ししますが、方針として「糸と針は使わない」ことにしているので、布を元通りに縫う最後の作業は、お母さんにお願いすることにしています。

―三上さんにとって、よいおもちゃとはなんですか?
「修理できる」というのはもちろんですが、「飽きない」ものがよいおもちゃだと思います。
「触った質感がよい」「つるつるしていてきれい」など「触って愛着をもてる」ものであること、そのおもちゃを使って自分でストーリーを作って遊べる「子どもの想像力を育む」ものであることが大事です。そういうおもちゃって飽きませんよね。
スイッチをいれたら勝手に動くおもちゃは、最初は目を引きますが、すぐに飽きてしまいます。
私は、「木馬」というグループで木製おもちゃの製作もしていますが、無動力でも自分で動かして遊ぶおもちゃはとても人気があります。
子どもって、たとえばお気に入りのタオルをかじっていると安心して、ボロボロになっても離さないでしょう? 気に入ったものはいつまでも大切にするものなのです。そういうたぐいのおもちゃを見きわめて、与えてほしいなあと思います。

私自身はおもちゃのない時代に育ち、遊ぶ道具は自分で竹を切ったりして作って遊んでました。だからおもちゃにまつわる思い出はあまりありません。
親になっても仕事人間で、子どもとおもちゃを通じて関わった記憶はあまりないのですよ。ようやく今、孫に自分で作ったおもちゃをプレゼントしたり、直してあげたりして、喜んでもらっています(笑)

おもちゃを通して生きる喜びや心の交流の場を>>に続く

———————–プロフィール———————————————————
三上峰代(みかみ みねよ)
1940年生まれ 
1965年千葉工業大学卒業 
1965~1997年昭和電工㈱勤務。技術者として活躍。
1998年~ボランティア団体 リリーフクラブにて高齢者支援に携わった後、2004年「みなみ・おもちゃ病院」を開設。
現在、常時受付可能な2か所を含む10か所でおもちゃ病院を開催。
2005年より姉妹グループ:木の遊具工房「木馬」にて、木の質感にこだわったおもちゃの制作なども手掛けている。
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